省エネが地球を滅ぼす

H22.6.7 更新

 地球温暖化防止のため、温室効果ガス(CO2)の排出量削減や、エネルギーの浪費は控えなければならないだろう。必要なエネルギーも効率良く使わなくてはならず、そこで「省エネ」という文字が近年好んで使われるようになってきた。身近で直ぐ実現できる救世主のように「省エネ」を冠したものが溢れてきた。

 しかし、それらの「省エネ」と謡われているものが、それ自体では省エネやコスト削減になっていても、地球全体で本当に効果が有るのかどうかは冷静になって考えてみる必要がある。
怖いのは、「省エネ」さえ冠していれば、多少浪費しても大丈夫だと錯覚してしまうことだ。
胸を張って正々堂々と「省エネ」を実行して、その果てに待っていたのは地球破滅ということに。




★路線バスや乗用車のアイドリングストップ
路線バスがバス停や信号待ちで停車する度にエンジンが停止して、アイドリング時の燃料消費をカットして省エネを計ろうとするもの。

<<検証>>実際の運用を観察していると、市街地では数十秒〜数分走っては信号やバス停で数秒とか20秒くらいエンジンを停止して、直ぐにエンジンを再始動するのが現状である。青信号で出遅れないように、直行する歩道の信号が赤信号に変わった時点で故意にエンジンを再始動させていたりする。酷い場合は3秒ほどのアイドリングストップも多々見受けられる。アイドリングストップをして節約出来る燃料の量と、エンジンの再始動時にセルモーターを回す度にバッテリーの電力を消費して、そのバッテリーを充電するために余分な燃料を消費してしまう量と、どちらが多くなるのだろう。また、バッテリーも大容量の物を積まなければならないため車重が重くなるので、厳密に言うと燃料消費も僅かながら増える。
 アイドリングストップ搭載車のバッテリーは、バッテリーの負荷が大きく寿命が半分とか1/3の短寿命となり、価格も1.5倍くらい高価である。
 また、アイドリングストップ装置を付加するには、その装置を製造するのにもエネルギーを使うし、装置の維持や廃棄時にも余分にエネルギーを使う。
 駐車場や発車時間待ちや国道などの大きな交差点での信号待ちでは、環境にも経済的にも効果が有るので実行するべきであるが、短時間でのアイドリングストップ装置の効果には疑問が残る。

アイドリング時の燃料消費率×停止時間 ?=? エンジン再始動時のエネルギー+装置製造に掛かるエネルギー+装置の維持や廃棄時のエネルギー



蛇足: 車椅子対応の中乗りノンステップバス(アイドリングストップバス)がどんどん増えつつある。しかしながら、このタイプのバスは車内の通路は狭くて車内での移動がし難い。また、座席幅が狭くてタイヤハウスの出っ張りが大きいので座る気がしない。二人掛けの座席幅は70cmあまりで、とても大の男二人が座れるものではない。
このノンステップバスに乗車すると、通路が狭いので前へ行けば降りる人の邪魔になるし、後ろに行けば降りたい時に出られないので、乗客は入口付近に留まらざるを得ない。つまり、優先席に座れる人以外は乗車しても安住の場所が無いのである。
このタイプのバスは満員(入口付近だけ)で乗り込めなくなることが多く(後ろドアのバスなら力尽くで背中を押していけば徐々にスペースが出来て結構乗れた)、混雑時は入り口から半径2m程がギューギューの地獄でも、車内の出口付近や後部座席付近は空いている。
また、このバスの入口ドアセンサーはドアから30cm以上離れないとドアが閉まらない。ドアが閉まらないので5cm10cmと無理して乗客が中に入ると二人くらい乗れるスペースが空き、そのドアセンサーが働いているのを知らない外待ち(バス停)の人が更に乗り込んで来て、再びドアが閉まらない状態になる。数十秒その状態が続いてから、最後に乗った二人が諦めて降車したことでやっとドアが閉まる。ある程度込んでくると乗り降りに時間がかかって、バスのダイヤは遅れ勝ちになる。

近年、路線バスの床はより低くなり、貸切(観光)バスの床はより高くなる傾向にあるが、どちらのバスもお年寄りや体の不自由な人が利用するのだから、乗降回数が異なるとは言えちょっと矛盾を感じないでもない。



★タクシーの風力発電
タクシーの屋根上に小さな扇風機のような発電機が乗っていて、これで発電して行燈の点灯とかお客さんの携帯電話の充電とかに使うそうで、風力発電だからクリーンエネルギーで地球環境にやさしい、との触れ込み。

<<検証>>停車中に風が吹いて発電する場合は確かにクリーンエネルギーであるが、走行中の発電は屋根上に取り付けた発電機が空気抵抗になり、発電機が無いときに比べ僅かながらガソリンの消費が増えてしまう。発電させる装置を製造するのにもエネルギーを使っているので、実際に省エネやクリーンエネルギーになっているのかは疑問が残る。しかし、タクシーの風力発電ということでの宣伝効果があるので、経済的には十分効果を発揮しているのだろう。

 

★省エネ製品への買い替え
 家電製品等で、旧タイプの製品に較べると新製品は何%の省エネになるから、直ぐに買い替えるとこれだけのCO2削減になる、とマスコミで報じられることが多く、国民は皆これを信じている。これらの報道やCMは詐欺と言っても過言ではない。確かに新製品そのものは、例えば冷蔵庫などは消費電力が数十%少なくなっているが、買い替えるとなると、製品を製造するのに、そして製品を運搬するのに、そして旧製品を廃棄するのに余分にエネルギーを使うということを抜きにしている論理である。消費サイクルを早めることはCO2を更に多く排出すると云うことに繋がる。
 エコ家電に買い替えると補助金が貰えるという政策があったが、その時に増えたのが家電製品の不法投棄である。補助金で買い替える人は、家電リサイクル負担費用も節約しようとするため、一番安く済ませるには家電製品の不法投棄になる。



★レジ袋廃止
 スーパーやホームセンター等でのレジ袋を廃止しようという動きが盛んになってきた。またレジ袋廃止が地球温暖化防止に大きな効果があるように言われている。しかし、レジ袋を廃止しても、実際のCO2排出量削減が地球温暖化防止に効果のある数字になるかは疑問である。
<<検証>>先ず、レジ袋を製造するのに数十万キロリットルの石油を使っているが、これは車や他のエネルギーでの石油消費量に較べれば、レジ袋での石油消費量は0.1%くらいである。レジ袋全部を廃止すれば確かに0.1%削減されるが、便利な生活に慣れてしまったものをを完全に廃止することは不可能であろう。

 レジ袋は家に持ち帰ったら、即全てゴミになるかと言えばそうではなく、多くの人はゴミ袋にしたり、いろんなものを整理したり、再び鞄代りに使われたりと、レジ袋がリユースされることが多い。レジ袋が無くなったら、ホームセンター等でゴミ袋を新たに買い求めるという人も多いのではないだろうか。

 買い物で複数の品を買った場合に、レジ袋が無ければ手では持ち帰れないため、エコバッグや風呂敷等を用意しなければならない。レジ袋を使わないからといってエコバッグ(製造に余分なエネルギーを消費する)や買い物用の鞄を購入したのでは本末転倒になってしまう。

 レジ袋には買物の清算が終わった証と、レジ袋の表には店名が印刷されているのでお客さんが持ち歩くことでの宣伝効果もあった。
だからと言って何もしない訳にはいかない。便利さを買うと云う意味でレジ袋が必要な人は有料化するのが一番現実味があるのではないだろうか。

 

★エネルギーを沢山消費するということは、豊かな生活環境下で人生を過ごすということである。省エネの旗印を前面に押し立てるなら、ベンツもランドクルーザーも不要になり、家電製品の便利な機能も無用になってしまう。
乱暴な言い方をすると、地球温暖化抑制のため、文明の恩恵を蒙りながら経済成長を続けてエネルギー消費を削減するのは不可能なことだ。行政がマイナス成長を覚悟で指導すれば温暖化防止は出来るかもしれないが、そんなことは実現不可能で、「省エネ」というマジックで対応するしかないのだろう。

マイナス成長(横ばい経済)を受け入れ、本気でCO2削減に取り組まなければならない時期に来ている!!

 

★エアコンの省エネ
 現行のエアコンに比べて、新型省エネエアコンは年間消費電力が大幅に少なくなり、CO2排出量が大幅削減になると業界が買い替えを促しているが、そのもとになるデータが実情と大幅に異なるとのアンケート記事が有った(朝日新聞H22.5.24)。元になるJISのデータでは、国民はエアコンを常に使用(年間4319時間)しているとしているが、実際に国民が使用しているのは515時間とJIS値に比べて少なく、そうなれば省エネ分の電気代が○○円お安くなるとの宣伝文句は嘘になる。既に国民自身が経済的な理由や環境を考えCO2削減意識を持っているのに、業界は更に買い替えよと国民に負担を強いるのか。
 エアコンを買い替えれば、古いエアコンが解体処分され、そのためフロンガスが大気中に放出(業界の説明ではすべて回収されることになっているが、実際の現場では廃品であるため荒っぽく扱われ、思わぬところでフロンガス漏れ事故に)される危険が増えることになる。買い替えを促進してもCO2削減にはならず、逆にCO2排出量増加に拍車をかけることになる。

 昔、TVコマーシャルで、「灯油使用量が年間200リットル節約できる」とTVで大きく宣伝していたけれど、我が家での灯油の年間使用料は200リットル以下だったので、こんなことで騙される消費者がいるのかと不思議に思った。